DTMで音をCDっぽく大きくするために無料プラグインで音圧を上げる最終手段的なやり方、方法を考えてみた(2016年6月時点

C754_mixer

※注意
この記事で紹介している方法はかなり素人っぽい…というかほぼ力技に近いやり方です。
正攻法ではありません。ミキシングをちゃんとするのが一番です。
ただ、発想としては一度は通る道かと思うのでアーカイブとして残しておきます。
ホントにとりあえず、ただひたすら音圧を上げてみたい方はお読み下さい。
何かを考えるキッカケになれば良いと思います。
(2017年1月14日 追記)


どうも、りーず(leez)です。

最近は暑くなってきましたね…。(*_*)

2016年6月時点での音を大きく、最近のMIXっぽく大きくするための方法を書いていきたいと思います。音圧の上げ方を説明します。
(7月2日、一部更新)

・音圧を上げるために苦労してきた
・MS処理とは?
・MS処理をするための無料プラグインを使おう
・デメリット

ある程度知識があることを想定しています。

・音圧を上げるために苦労してきた

・「音を大きくする本」を買って読んだ。
・ミックス、マスタリングの方法はサウンドレコーディングやSoundDesigner、DTMマガジンで一通り読んだことがあり、実践したことがある。
・ある程度有料プラグイン(Waves L2,L3など)を使ったが、音が思ったように大きくならなかった。

はい、つまりこれは僕のことです…。

・まずはフェーダーでMIXのバランスを整える
・必要に応じてトラックにコンプレッサーを挿す
・パンニングを考える
・イコライザーで音のぶつかりをカットする
・必要であれば高音、低音はバッサリ切り捨てる
・マスタートラックでマキシマイザーを使って音を大きくする。

このあたりまで分かっていたのですが、それでも何故か「あと一歩」が上がらず、
とても困っていました。

音圧を上げるためにぼくはどうしたか

ぼくがよく作る曲は、碧霄エンジェリックのようにシンセサイザーを多様する曲です。

※碧霄エンジェリックでは今回の方法を使っていません

EDMや鍵盤出身の方だとシンセパッドを使ったり、「音が真ん中にあるもの」を多様する事が多いので、どうしても音が真ん中に寄ってしまいがちだと思います。
(というか意識しないとそうなってしまう。)

そこで大事なのはパンニングを考えることですね。
この楽器は右にふる、左にふる、と色々やっていきます。

MIXもある程度自分の思うようにいき、さあマキシマイザーで音を大きくするぞ!とスレッショルドを下げてみて、音圧が上がる最大のところで書き出す…。
しかし思ったように音が大きくなりませんでした。

長々と書いてきましたが、MS処理を入れることが解決の手段でした。
音は先程書いたように真ん中に寄っているので、それをサイドに分散させてあげます。

MS処理とは?

MS処理のMはミドル、Sはサイドの音のことです。プラグインや、ある手順で音処理をすることで
「サイド」と「ミドル(真ん中)」の音を切り離すことができます。切り離してからサイドだけ上げて、またミドルとサイドをくっつけて音を上げるのがMS処理のイメージです。

OzoneやT-Racksのようなトータルマスタリング製品にはこういうものが付いていたり最初から組み込まれていたりするようです。

ぼくはWaves勢なので持っていませんでした。WavesにもS1というものがあるのですが、ちょっとこれが使い方が分かりづらい上に使い勝手がよろしくない。頑張っても音が結構割れてしまいます。

そこで、WavesではWaves CenterというMS処理を行うプラグインがあるのですが、これが高い。
Waves Platinumバンドルにも付属してこないので、単品で手に入れるしかない。
しかしお金などない…

で、どうしたかというと、無料プラグインを使いました。

・MS処理をするための無料プラグインを使おう

開発元:VARIETY OF SOUND
プラグインの名前:Rescue MK2
ダウンロードリンク:https://varietyofsound.wordpress.com/downloads/

(リンク先にある「Rescue MK2」をダウンロード)

ぼくのマスタートラックのプラグインの挿し方はこうです。

7月2日更新:プラグインを挿す順番を以下に訂正しました。
(最初の記事では①と②を逆にしていました。でも以下の順番のほうが良いです。)


①まずマスタートラックにRescue(MS処理プラグイン)をかけてサイドの音を上げる。
ミドルの音もやや上げたりして調整。

(Cubaseの場合、付属プラグインのステレオエンハンサーでもちょっと良い感じになります。
他のDAWでもステレオイメージャー・ステレオエンハンサーがあればそれでも代用できるかも。
ただ、ステレオイメージャー/エンハンサーはMS処理とは意味合いが異なりますのであしからず…)

②その次に、Waves C4(マルチバンドコンプレッサー)をかける。(必要でない場合もある)

③そしてマキシマイザーWaves L3で音圧を上げる。(任意のマキシマイザーでOK)

フリーのマキシマイザー(リミッター)で有名なものはW1 Limiterです。WavesのL1をクローンしたものだそうです。
http://www.yohng.com/software/w1limit.html

ただ、マキシマイザーに限っては有料のもののほうが良いです。
音のピークの先読み(先読みピークリミッター)の技術が優れていて音割れしないからです。

Waves L3 Multimaximizer
https://www.audiodeluxe.com/products/waves-l3-multimaximizer

ちなみにWaves L2はWaves L3よりも軽くて素直に音を上げてくれます。好みの分かれるところ。
(L2は純粋なリミッター・マキシマイザーで、L3はマルチバンドのリミッター・マキシマイザー)
余計な色付けをしない上に異常に軽いのでL2のほうが万能選手です。

 

(2018年3月31日追記:
すみません、Cubase Pro 9.5付属のマキシマイザーを使ってみたのですが、いまの付属のマキシマイザーはかなり良くなっていました!)

 

④最後にCubase付属のプラグインUV22HRでディザリングする


①でサイド成分の音を上げてから③で全体の音圧を上げているのがポイントです。
マキシマイザーをかけた後にMS処理をすると音が割れるので順番に気をつけましょう。

これで聴感で、音が3dBくらい大きくなるはずです。

※やりすぎると、耳が痛くなる(聴き疲れする)MIXになるので、適度にしましょう!

②は、僕が全帯域に軽くコンプレッサーをかけるためにしている方法です。
DAW付属のマルチバンドコンプレッサーでも代用できるかと思います。
Waves C4は非常に高品質なマルチバンドコンプレッサーです。これをプリセット指定してから少し調整してかけておくと良い感じにしてくれるので重宝しています。
(特に、帯域幅が広いピアノのマスタリングにはWaves C4は欠かせない)
マスタートラックに普通のコンプを挿す代わりに使っています。

④はご存知の方にはお約束の方法です。書き出しのときにビットを変換する場合必要なプラグイン。
24bitでプロジェクトを作っていて16bitで書き出すときはUV22HRで16bitを指定してあげます。

ただ、Waves L3にもディザー指定があるので、それを16ビットにしている場合は④は必要ないと思います。
Waves L3のディザーはOFFに出来るので、UV22HRを使う時はOFFにしたほうが良いです。
(デフォルトではONになっている)

ということで、ぼくなりの最近の音圧上げの方法でした。

今回はプラグイン目線でしたが、ビートルズのようにミキシングの段階で楽器を完全に左、右に振ってしまうのも手法としてあるかと思います。
ミキシングの段階でパンニングをしっかりと考えることも結果的に音圧を上げることに繋がると思います。

追記

・デメリット
今回の方法は、デメリットもあります。
それは、ボーカルなどの真ん中にいてほしい音のサイド成分も上がってしまうことです。
BusでMS処理をかけたいトラックをまとめて、そこにだけプラグインをかけるのも良いでしょう。

あと「歌ってみた」でマスタリングされる方は今回の方法をしてしまうとボカロPの配布した音源(既にMS処理をしている可能性がある)に更にMS処理をしてしまうので、止めておいた方がいいでしょう。

また、音圧を上げるには良いミックスを作ることが第一前提だと思います。僕も引き続きミックス・マスタリングを勉強していくつもりです。

今回参考にした情報など
・【DTM】あなたの曲をもっと迫力的にするマスタリングテクニック
・【歌ってみたMIX】無料プラグインでマスタリング【過程公開】
・WAVES / Lシリーズを比べてみました!


後日談(2017年8月追記):

2017年3月にiZotope Ozone7を購入しました。

Ozone7は4つの音の帯域(範囲は設定可能)ごとにMS処理(ステレオイメージャー)を別々にかけることが出来るので、「低音は真ん中よりにする」「中~高音域は広がりをもたせる」というようなことが簡単に出来ます。

また、コンプレッサーも4帯域ごとに分けてかけることができるので、マルチバンドコンプレッサーも付いているようなイメージです。かなり引き締まった音になります。
音が良い感じにまとまってくれます。

これによって、3~10トラック程度の楽曲ではマスタリングの悩みがほぼ無くなりました。

(それ以上のトラックになるとまた大変になりますが…)

1~2トラックの楽曲についてはWavesのL3、L2などで十分です。

自分の中では
・Wavesはミキシングの細かい調整をする道具
・iZotope Ozone7はマスタリングの優れた道具
といったイメージになっています。

無料プラグインではないですが、よければ見てみて下さい。

iZotope Ozone7
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/209153/


さらに後日談(2017年9月追記):

PVが増えているので更新です。

この記事ではマスタリングでのMS処理を紹介していますが、ミキシング時にベースパートにMS処理をしてサイド成分の音を上げてあげると、自然な感じを保ちつつ聴覚的な音圧が上がりました。

ジャンルにもよるとは思いますが、積極的な音作りという意味ではこちらの方法もアリかもしれません。

その他のこと

・ミキシングは、そもそも(?)フェーダーワークが重要な気がします。フェーダー(ボリュームつまみ)をいじって、音のバランスが全体的に自然になっているか(自分が聴きやすいかどうか)を探ってみましょう。(自分に言っている)

・また、音が瞬間的に大きくなっているトラックがないかチェックして、もしあったらそこがマキシマイザーのトリガーになってしまっている可能性があるので、調整しましょう。

・更に言えば、そもそも録り音が悪ければ、それ以上音の輪郭がクッキリしたり、ハリが出たりすることは無いと思います。ボーカルでもインストゥルメンタルでも、やはり音源は重要です(あえてチープ感を出す場合もあるとは思いますが)。
ソフトウェアシンセがあってもハードウェアシンセをあえて使う方々がいるのもそのような理由だと思います。

・楽曲に低音(ドラム・ベース)から中音域(コード系の楽器)、高音域(シンバル等の飾り系の楽器)が入っているかどうか等も大切だと思います。また、その楽器に音の芯はあるか。ただ音が鳴っているだけになっていないか(帯域を埋められているか)という点も重要ですね。
(逆に1つの音が目立ちすぎてしまっていないか。)
詰め込みすぎるのもアレかと思いますが、少なくとも音の成分が入っていない限り、音量感が感じられることは無いかと思います。編曲(アレンジ)に立ち帰る感じの話ですね。
それぞれの音域を埋めるのは、絵で線画に色を塗るのに似ているような気がします。

音に芯が無いな、と思ったら似たような楽器のユニゾンで音を重ねるという方法もあります。

・リスニング環境も、低音がしっかりリスニングできる環境が必要だと思っています。ヘッドフォンではやや限界があるので、ちゃんと空気を鳴らして確認できるようにサブウーファーの導入を考えています。

・曲数をこなして経験値を積むのが一番のような気がします。下手でもきっと味になるのでミキシングで立ち止まらず、とにかく曲を出すことを優先しましょう。あとで反省すれば良いのです。

何かの参考になればと思います。ミキシングもマスタリングもまだまだ勉強していかなければいけないと思っています。


2018年2月2日追記

世界の Goh Hotoda が語る、
WaveLab と現代のマスタリング術

(2014/03/12)
https://japan.steinberg.net/de/artists/steinberg_stories/goh_hotoda.html

宇多田ヒカルのアルバム「First Love」、ジャネット・ジャクソン、マドンナ、ビョーク、マーカス・ミラー、坂本龍一などのアーティストを手掛けた超一流エンジニアのGoh Hotodaさんのインタビューです。

Goh Hotoda が語る WaveLab Pro 9

(2016/03/28)
https://japan.steinberg.net/jp/artists/steinberg_stories/goh_hotoda_w9.html

「 — Brainworx のプラグインで一般的になった M/S 処理ですが、エンジニアにとっては昔からある古典的なテクニックの一つなんですよ。ぼくは70年代から使っていましたが、当時は今のように便利なツールは無かったので、左右の音を一旦パラにし、一方をフェイズ・キャンセルしてセンターの音を作っていましたね。本当に M/S ステレオでやりたいときは、最初からマイクを M/S 方式で録ってしまったりとか。M/S シグナルを処理として使うと、左右をクッと広げたり、真ん中だけを少し落としたり、音像のコントロールが自由にできるようになるんです。最近のアメリカの作品で、レンジがグワッと広がっているものがあるじゃないですか。ああいった作品の殆どが M/S 処理によるものでしょうね。WaveLab Pro 9 では、そんな M/S 処理がホストアプリケーションレベルでできるようになったのがいいですね。ただし M/S 処理は音量や音圧が変わってしまうので、マスタリングで使うには注意が必要なんですが、WaveLab Pro 9 では M/S 処理がオーディオモンタージュ全体だけではなく、クリップ単位で処理をすることもできますしね。 」

引用元)「Goh Hotoda が語る WaveLab Pro 9

Goh Hotoda (ゴウ・ホトダ)
プロデューサー/ ミックスエンジニア
http://hotoda.com/jp/profile.html

プロの現場でも注意しながらM/S処理は使われているようです。
ただやはり、「音圧を上げる」という目的ではなく、それ以外の意図を持って使った方が良いようです。


2018年2月18日追記

「M/S処理と留意事項」- スタジオ・ギョーキマエ

http://pspunch.com/pd/article/ms_processing/

こちらもどうぞ。M/S処理の留意事項などが具体的に書かれています。


2018年3月3日追記

無料プラグインではないのですが、有料プラグインでのオススメです。
Waves L3-16というマキシマイザーであれば、市販のCDレベルまで音圧が上がります。

Waves L3-16 Multimaximizer

https://www.audiodeluxe.com/products/waves-l3-16-multimaximizer

これだけでも良いのですが、Ozone8で自動マスタリングをして、マキシマイザーだけOFFにし、Waves L3-16をかけるのが良いです。

iZotope Ozoneは8になってから、マキシマイザーが結構簡単に音割れをするようになってしまいました。7のときは音圧をかなり稼げたのですが…。