初音ミクとは何か簡単に。ボーカロイド(VOCALOID)とは何か。誕生からこれまでの流れを書いてみる

初音ミクとは何か、VOCALOID(ボカロ)とは何かを簡単に書いていきたいと思います。
初音ミクの人気の理由は、その誕生から見ていくと分かりやすいです。

・初音ミクはVOCALOIDという音声合成ソフト
・最初はどちらかというとネタとして扱われていた
・「メルト」によって状況が一変する
・大量の「埋もれていた才能」が初音ミクというソフトによって歌われた
・現在の状況

このような流れで解説します。Wikipediaには結構細かく書いてあるので、自分の主観から書いていきたいと思います。

ではいきなり結論です。

・初音ミクはVOCALOIDという音声合成ソフト

初音ミクというのは、音程(メロディー)と歌詞を入力すると歌ってくれるソフトウェアです。

区分的には「ボーカルシンセサイザー」という、コンピュータで動かす楽器です。
ボーカルシンセサイザー – Wikipedia

初音ミクV2 – Amazon
↑これがVOCALOIDとして大ヒットを記録した『初音ミク』の第一弾です。
「V2」となっているのは、「ボーカロイドエンジンのバージョン2」という意味です。V1で違うキャラクターのボーカロイドが既に発売されていました。

初音ミクV4X – Amazon
↑これは最新(2017時点)のバージョンです。

ヤマハの「VOCALOID」(ボーカロイド)という音声合成システムによって動いています。
初音ミクとは、もっと正確に言えば、その「VOCALOIDの歌声ライブラリの1つ」です。
ボーカロイド、なので略してボカロと呼ばれています。

パソコンで歌声を作って、自分の作ったオリジナル楽曲に合わせて歌わせることで、誰でも簡単に歌モノの楽曲を作れてしまうソフトウェアです。

初音ミクはV2 → V3 → V4X というふうにバージョンを重ねてきました。

最新版は初音ミクV4Xというバージョンです。5種類の歌声ライブラリ(声の種類)が最初からついてきます。
MacでもWindowsでも動きます。

初音ミクの誕生は今からちょうど10年前の2007年にさかのぼります。

VOCALOIDの音声合成エンジンを使った、いわゆる「ボカロ」は、初音ミクが発売される前も何種類か発売されていましたが、あまり注目されていませんでした。

ボカロの音声合成エンジンを開発していたヤマハは、他のメーカーがボーカロイドの音声ライブラリの開発ができるようにライセンス(権利)を分けていました。

そして、当時設立10年程度のベンチャーであった北海道のIT企業『クリプトン・フューチャー・メディア』が音声ライブラリを開発し、2007年8月31日に発売して大ヒットしたボーカロイドが「初音ミク」でした。

・最初はどちらかというとネタとして扱われていた

当時、コメント投稿型(コメントが横に流れる)動画サイトとして「ニコニコ動画」が生まれたばかりで、様々なネタ動画が投稿されたりして、にぎわっていました。

最初の数ヶ月は、初音ミクは「既存曲のカバー」や「替え歌を歌わせる」「ネタ」程度に扱われていました。
おそらく皆の認識もそういう感じだったと思います。

「メロディと歌詞を入れて歌わせられる」というのが面白くて、『初音ミクのキャラソング』も流行りました。

・「メルト」によって状況が一変する

そんな折に、2007年12月7日に投稿された「メルト」によって、状況が一変します。


(作詞作曲は、当時無名、いまはメジャーデビューして化物語ED「君の知らない物語」などでも知られるryoさん)

メルトが行ったことは、初音ミクにクオリティの高い「オリジナル楽曲」を歌わせたことです。
「個人によって作られたオリジナル曲、それもJ-POPのように作り込まれた完成度が高い曲」が投稿され、大ヒットしたのです。
投稿から約1ヶ月(37日)で100万再生を達成します。

個人で作ったオリジナル曲を歌わせて、100万再生もされるというのはとてつもない衝撃でした。
(当時はちょうどiPhone、スマホの黎明期で、ニコニコ動画を見るのはパソコンを持っている人が中心の頃です。)

ボーカロイド以前の音楽業界(2007年以前)は、インディーズレーベルかメジャーレーベルで活動をして、しかもそれで売れないとラジオやテレビに楽曲が流れることがない時代でした。

それこそ、地方に住んでいる人はまず上京する必要のある時代でした。

本当に僅かな条件が揃った人たちのみしか自身のオリジナル楽曲を沢山の人に聴いてもらえなかったのです。

それが、個人のオリジナル曲、それもパソコン1台で作ったもので、もの凄い再生数を伸ばせる時代になったんだ、という認識が広まり、大きな分岐点となったのがメルトでした。

・大量の「埋もれていた才能」が初音ミクというソフトによって歌われた

そのような状況下で、大量の「埋もれていた才能」を持つ人達が、初音ミクというソフトを使って自身の楽曲を歌わせるようになります。

人様々、理由はあるでしょう。

・ソング・ライティングの才能はあるのに声が受け入れられなくて曲を聴いてもらえなかった人
・そもそもボーカルがいなくて自分も曲を歌えなかった人
・逆に、ボーカロイドの存在をキッカケに歌モノ作りを始めた人
・地方にいて、夢を諦めかけていた人
・ボーカロイドで立身出世を目指そうとした人
・純粋にボーカロイドの電子楽器としての可能性を感じた人
・とりあえずトレンドにノリたいエンジョイ勢…etc

(中にはとくPさんのように既にプロの世界で働いているような人もいました。)

様々な人がオリジナル曲を作り、初音ミクをはじめとするボーカロイドで歌わせるようになったのです。
(GUMI、鏡音リンレンといったボーカロイドも登場してきます)

このような背景から、2008年-2013年あたりまでにかけて、非常にクオリティの高い楽曲が大量に投稿され続けるという状況がずっと続きました。

その頃のメジャー音楽シーンは、mp3プレイヤーの普及・レンタルCDのリッピング、YouTubeへの音楽の違法アップロード等により壊滅的なダメージを受け、ほとんど機能していませんでした。

ボーカロイドはある意味、メジャーシーンの代替的な役割を果たしていたとも言えると思います。

「初音ミク」タグで新着投稿を検索すると、深夜でも1時間以内におおよそ40~100曲規模の投稿があるような(数字はきちんと数えた訳ではなく、当時の印象です)、そんなような状況でした。分刻みで動画が投稿されているのを確認して驚いた記憶があります。

情熱や才能があっても報われなかった人達がすべての希望を託して投稿していたように思います。

ボーカロイドの特徴は、クオリティの高い楽曲は「歌ってみた」として歌い手さんに歌われたり、PV(音楽用の動画)が作られたりして作者自身も予想できないような二次創作作品として広がっていくことです。
バトンを渡すようにして次の作品が生まれることです。

例えば、こういう原曲がありました。

それに動画(PV)をつけた方がいました。

そして、そのPVに合わせて歌い手さんが歌った結果がこうなります。

もうひとつ。
こちらが原曲。

歌ってみたバージョン(様々投稿されているなかの一つ)

音楽だけでなく、MMD(MIKU MIKU DANCE)と呼ばれる無償CGソフトウェアが個人によって開発され、様々なタイプの3Dモデルも生まれ、映像も進化していきました。

3Dモデルも個人によって作られます。
それらを組み合わせて3DCG(コンピューターグラフィックス)のPV動画が個人クリエイターによって作られます。

絵が得意な人はイラストを描くことで参加できます。(ピアプロというサイトで交流も出来ます)

それぞれが自分の得意とする事で活躍できるのが面白いところです。

逆に、初音ミクの声と一枚絵だけで勝負した人もいました。

・現在の状況

現在は「埋もれていた才能」の放出が一段落したと言えます。米津玄師さんのように、メジャーに行って活躍しているアーティストさんもいます。

また、YouTubeやMixChannel等の台頭により、ユーザーはより自分に合った居場所を得られるようになりました。

ただ、新しい才能やボーカロイドだからこそ歌える楽曲など、まだ先が読めない可能性があると思います。

海外勢の調子も良いようです。

外国の方にVOCALOIDの面白さが広まり、既存ボーカロイド曲の「歌ってみた」(英語バージョン)などの動画がYouTubeに大量に投稿されています。

ボーカロイドの功績は、テクノロジーによって全ての人に平等にチャンスを与えた、という点にあると思います。

海外の「歌ってみた」

 

ボーカロイド24時間ランキング(毎時更新)
https://www.nicovideo.jp/ranking/genre/music_sound?tag=VOCALOID

ソングストーリー – ボーカロイド新曲ランキングサイト
https://www.songstory.me/